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就活イベント、インターンシップだけではない?学生だけではなく、企業も一緒に学ぶ~出張授業編~

こんにちは。富士通グループ採用担当の高橋です。

これまで何度かこのREALで記事執筆をいたしましたが、かなり久しぶりの単独執筆です。今回も就職活動にまつわるネタやアドバイスを、ざっくばらんに書いていきます。私はシステムエンジニア、人材育成、人事・採用と3つのキャリアを経験してきました。そこから得られた経験・知見などを交えてお伝えできればと思います。

今回は「あなたの知らない採用の世界~出張授業編~」と題して、本業の傍らで私が取り組んでいる出張授業について書きます。この取り組みは、採用の職務に直接的につながるものではありません。しかし、長い目でみると採用につながっています。授業を担当する中で、授業を受ける学生にとっても、自分にとっても、とても大切なことだということが、少しずつ見えてきました。この記事を読んでいただいた後、「働くことの意義」について改めて考えるきっかけになればと思います。


受けたことはありますか?出張授業とは?

企業が学校に出向いて授業をすることを言います。対象は小学校から大学まで様々です。一回限りの授業もあれば、数回にわたって実施するものもあります。学生側に対して、私が目的として設定したのは、「社会人からの講義によって、物事の結びつきや新たな視点に気づいてもらい、学習と成長にポジティブな影響を与えること」です。

もう少し、具体的にお伝えすると、

・学んでいることと社会のつながりを考え、能動的に学ぶようになる
・通常の授業とは異なる説明・演習を体験することで、新たな分野に興味が湧く
・単調になりがちな授業のアクセントになり、これまでの学びの内省につながる

などが考えられます。

出張授業についてネットで調べると、企業と学校をつなぐ文部科学省のポータルサイトを発見しました。すでに一般的な取り組みになっていることに、今さらですが気づきました。多くの読者の方がこれまでに出張授業の学習経験があるのではと推察します。ちなみに私は大学から小学校までと記憶をたどっても、出張授業について思い出すことができませんでした(笑)。おそらく20-30年前はあまり無かったのでしょう。

私は高校と大学の出張授業を、年間5〜10件程度実施していますが、今回は大学の事例をひとつ取り上げます。みなさんの出張授業の経験と重ねながら読んでください。

大学で出張授業をはじめたきっかけ

出張授業は学校訪問をきっかけに始まりました。学校訪問は、本業の採用担当として、重要なミッションです。

○学校訪問の目的

・就活生向け自社イベントのご紹介(これからこんなイベントを自社で実施しますので学生にご紹介いただきたい)
・内定のお礼(御校学生が弊社内定につながりありがとうございます!)
・卒業生の近況報告(卒業生が職場で頑張っています!よければ〇〇さんをお連れしましょうか)
・近況のヒアリング(就職支援でお困りのことはありませんか?できる限りお手伝いします)

これらの目的で全国の学校を訪れます。「自社」という商品・サービスを売り込むための地道な営業活動と言えるかもしれません。数多くの学校を訪れ、近況をヒアリングする中であることに気づきました。

○ヒアリングで得られた主な相談事項

「キャリア観の醸成を目的とした授業をしているが、企業の視点が欲しい」

「ITはどの職についても大事だが、ITに興味をもたせるための工夫を考えたい」

「社会人の仕事を少しイメージして、学校の勉強に取り組ませたい」

どれも就職活動からは少し距離のある相談内容ということがわかります。感じたのは、「学校(学び)と企業(仕事)の間に隔たりがあり、つなぎとなる人や企画が必要。でも適した人材がいない、企画も難しい」ということです。それと同時に、SE(現場)と人材開発(育成)と採用(人事)の職務経験を持ち、就活中の学生から入社3年目までのキャリアに長年伴走してきた自分ならば、一人で対応できそう、独自の価値が提供できるのではと感じました。まずはお手伝いさせてもらおうと調整を進め、出張授業が実現しました。今回は事例をひとつご紹介いたします。

「ITを使った社会課題解決」をテーマにした探究学習

四国の某大学で実施しました。エリア特有の社会課題を探し、それを解決するためにITで何ができるかを考え、提案企画をプレゼンテーションする流れです。


○実施概要

学校:四国の某大学
科目:1年生向けのキャリア授業。地域貢献の意識とキャリア観の醸成が目的
担当:90分授業を1回(対面)、授業中のサポート数回(オンライン)、最終回発表
テーマ:「四国の社会課題を企業のITで解決する」をテーマにアイデア創出型のグループワーク
ねらい:「企業はビジネスだけでなく社会課題解決に貢献するミッションがある」という気づきを得る

○全体の流れ

<90分講義>
・ITが世の中にどのように役立っているかを紹介
・ミニワーク1:学校の授業を能動的に学ぶためにITがどう役立つか考える
・SDGs、CSR、ESGの説明
・ミニワーク2:社会課題について調べてみる
・お題提供「四国の社会課題を企業のITで解決する」

<グループワーク>
以降の授業で、グループワークを4回実施しアウトプットを作成。中間レビュー、発表練習も行う

<発表会>
・最終回の授業で発表、ふりかえり



今回の出張授業の準備から実施までの間で、様々なことが得られました。

○出張授業で得られたこと

・コンテンツ作成力がついた
今回は90分のコンテンツの構成からグループワークの設計まで、まるごとお任せいただきました。講義の目的を意識しながら一からコンテンツを作る経験、特にグループワークを設計する経験は、普段の業務では得られません。このような経験を積むことは、採用活動での上質なコンテンツ作成につながると感じました。

・学生の受け止め方・考え方を学んだ
学生からの感想で「サービス提供側(企業側)としてITについて考えるのは難しかった。利用者としてITに触れるのと全く違うことに気づいた」というものがありました。飲食業界で例えるとイメージしやすいのですが、料理を提供する側(お店側)と食事をする側(お客側)の視点の違いのようなものです。「調理する・サーブする」という仕事が身近で想像しやすいからでしょう。一方、「IT」に置き換わると、何をする仕事かがあいまいなため、学生にとってピンとこない、難しく感じる、ということに気づきました。

・就職活動をしている学生に対しても同じであると気づいた
ITについてサービスを受ける側(顧客側)の視点で事例を紹介することは、ITを身近に感じてもらうという面で大事です。ただしこれだけでは不十分だということがわかりました。本質的には、サービス提供側(企業側)の視点で仕事を丁寧に紹介することの方が大事ということです。私たち採用担当にとって大切なのは「ITのことを学生がイメージしやすいように、提供側の視点でいかにやさしく表現できるか」ということを学びました。

・企業の存在意義(パーパス)の重要性を認識した
企業がビジネス以外の視点、社会課題解決を大切にしているという点について、あまり知られていないことがわかりました。とりわけ地球環境問題は、どの業界の企業においても向き合わなければならないテーマになっています。「ITを駆使して顧客へ価値提供をする延長線上には、地球環境問題の解決がある」ということについて、学生がイメージしやすい表現にして伝えていくことの大切さに気づきました。

まとめ:学校と企業が相互に学び合う空間

最後まで読んでみて、どのような印象・感想を持ちましたでしょうか。学校・企業ともに、能動的に学び成長し、社会で活躍して欲しいという願いのもと、このような取り組みを地道に行っています。みなさんが学んでいる分野が何であろうと、その学びは必ず社会で役立ちます。これまでの学びが少しでも漫然としていたのであれば、これからはぜひ社会との結びつきをちょっとだけ意識して学んでみてください。これまで気づけなかった、面白さ・楽しさにきっと出会えることでしょう。私自身も出張授業を通じて多くのことに気づき、学び、成長が得られました。いろいろと教えに行っているつもりでしたが、逆に教えてもらうことが多いです。出張授業は、学校と企業が相互に学び合う空間ということなのでしょう。これからもこのような機会を大事にしていきます!

今回の事例紹介は大まかな内容でしたが、これらの出張授業は毎年実施しています。またの機会に詳細のリポートができたらと思います。それでは。


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