『視覚障がいのある研究職』と『聴覚障がいのあるSE職』の日常とキャリア
Q.自己紹介をお願いできますか。
簗島さん:富士通株式会社人工知能研究所にて研究員として働いています。主な仕事内容として、データの中から因果関係を発見する技術である「統計的因果探索技術」について研究を行っています。障がいについては視覚障がいがあり、4歳から全盲です。PCの画面を音声で読み上げるスクリーンリーダと、画面の内容を点字出力する点字ディスプレイを併用して仕事をしています。
上村さん(簗島さんメンター):富士通株式会社人工知能研究所に所属しています研究員の上村です。ものごとの因果関係を明らかにすることで、データから新たな発見をする方法について研究しています。簗島さんのメンター兼チームメンバーとして一緒に仕事をしています。
*メンター:ビジネス面だけではなく、精神面をふくめてサポートする先輩社員のこと。
谷畑さん:富士通株式会社ジャパン・グローバルゲートウェイにて、SE職として社内の業務効率化(経理データの可視化等)を図るためのアプリ、ツール開発に携わっています。現在は、Palantirという製品を用いてデータの一元管理、利用者向けの画面作成等を行っています。普段はテレワークで、チャットでプロジェクトメンバーと連絡を取りながら開発に取り組んでいます。障がいについては、耳に持病があり、普段補聴器を付けて生活しています。
小林さん(谷畑さん同僚):富士通株式会社マネージドインフラサービス事業本部に所属しています。谷畑さんとは入社前の会社のオンラインイベントで知り合いました。同僚であり、同期入社です。職種はSEで、保守マネジメントサービスの商品化・拡販の業務に携わっています。
▼視覚障がいのある研究職の専門性を活かしたワークモデル
インターンシップが繋いだ研究者としてのキャリア
Q.簗島さんの入社のきっかけを教えていただけますか?
大学院博士課程在学中に招聘研究員として現在の所属先でインターンシップを行いました。約半年間のインターンシップ期間を通じて、会社の雰囲気や環境などについて実体験し、ぜひここで働きたいと思い入社を決めました。
特に、入社を決めた大きな理由の一つとして、「障がいの受け止められ方」が心地よかったということがありました。必要以上に障がいにフォーカスするのではなく、一人の研究員として自然に扱ってくれる土壌が整っている点が決め手になりました。「配慮はするが遠慮はしない」という富士通の障がい者雇用の理念を実感できています。
専門性を活かした研究業務とアクセシビリティ向上への貢献
Q.現在の仕事のやりがいは?
私の大学院での専門は数学の確率論で、理論研究が主でした。現在業務で取り組んでいる研究も統計学の理論に根差したものです。業務の中では健康診断データなどの実データに触れる場面もありますので、ユーザをより意識した研究活動ができています。実データは取り扱いが技術的に難しい面も多いですが、その分やりがいも感じています。また、現在人工知能分野の研究動向は変化が激しく、日々世界中から新たな知見がもたらされる分野になっています。そのようなトレンドの中で研究活動が行えていることもポジティブな刺激になっています。
さらに、主要な業務とは別の活動として、社内プロジェクト「みんなちがってみんないいプロジェクト(通称みんみん)」の活動に参加しています。このプロジェクトでは、障がい当事者が中心になってDE & Iの推進を行っており、私も障がい当事者として社内インフラやWebサービスのアクセシビリティ向上に向けた啓発活動に取り組んでいます。活動を通じて普段の業務では関わることのない様々な方と出会うことができ、情報共有によって業務での不便さが改善するなどのプラスの効果も実感しています。所属先の上司からも積極的な参加を奨励していただいており、仕事のやりがいにつながっています。
裁量労働制を活用した勤務スタイル
Q.富士通では、最適な働き方を実現するため、働く場所・時間の自由化、テレワークの推進を行っていますが、 簗島さんの現在の働き方を教えていただけますか。
リサーチャー勤務制度を利用し、裁量労働の形態で勤務しています。勤務時間については定時である8:45から17:30を中心に、そのときの業務内容に合わせて調整しながら働いています。勤務場所としては在宅でのテレワークが中心で、対面でのミーティングなど用事があるときのみ出社しています。
▼テレワークのとき
8:45~10:00 勤務開始(開始時刻は日によって異なる)
事務作業(メール確認、書類作成など) e-Learningの受講
12:30~13:30 昼食
13:30~ ミーティング、研究業務(論文調査、コーディング、数値実験など)
17:30~19:00 勤務終了(終了時刻は日によって異なる)
▼出社するとき
8:45~10:00 勤務開始(開始時刻は日によって異なる)
事務作業(メール確認、書類作成など) e-Learningの受講
11:30~12:30 移動
12:30~13:30 昼食
13:30~ 対面ミーティング、ディスカッション、研究業務(論文調査、コーディング、数値実験など)
18:00~19:00 勤務終了(終了時刻は日によって異なる)
Q.テレワーク時と出社時の配慮や工夫していることを教えていただけますか。
テレワークのとき
どうしてもスクリーンリーダでは読み取りが難しいものや、使いづらい社内サービスなどが出てきた場合には同僚とTeams通話をつないで画面共有で教えてもらっています。また、出社して一緒に見てもらいながら作業したほうが、効率が良い場合もあるので、適宜判断して切り替えています。
在宅の場合はスクリーンリーダの音を気にせずに出せるので、自分の聞きやすい環境を整えて作業しています。
出社するとき
自宅からオフィスまでは単独で移動します。オフィスはフリーアドレスで、いろんなタイプの席を仕事のスタイルによって自由に選択できる良さがあるのですが、私にとっては空席を見つけるのが難しい、という問題があります。そのため、基本的には同僚とタイミングを合わせて出社し、待ち合わせをしています。タイミングを合わせられないときは、他の知り合いに連絡したり、一般の社員さんに尋ねて案内してもらったりもします。社内サービスのAerukamoを利用するとそのとき出社している知り合いの所在がわかるので活用しています。このようなシステムがさらに発展し、自分で席を見つけたり、周囲により簡単に尋ねたりできるようになると単独でも出社しやすくなると思っています。
挑戦と頼るバランスをうまくとり、ポジティブに働く
Q.簗島さんは、普段どのようなことを心掛けていますか。
不慣れな業務やサービスに出会ったとき、「挑戦すること」と「頼ること」のバランスをうまくとるように心がけています。まずは自分の力でどこまでできるのか、障がい特性上どこからができない限界なのかを自分で把握するためにも、自分で情報を調べたりサービスを使ってみたりします。しかし、ある程度やってみても、らちが明かない場合には、自分の中で線を引いて相談をしてみます。すると、よりやりやすい方法が見つかったり、実は自分が困っていたことは目が見えるか見えないかにかかわらず、皆困っていることだったりします。障がいがあると必然的に頼ることが増えて気持ち的に疲れてしまうこともあるので、このバランスを上手にとって、ポジティブな気持ちで働くことが大事だと思っています。
確認と検討を重ね、より良い環境をつくる
Q.普段、上村さんは、メンターとして、どのようなサポートをされていますか?
基本はテレワークなので、他の方と同様にテキストチャットベースで仕事をしています。ただ社内システムは読み上げが効かなかったりマニュアルも画像ベースであったりすることが多いため、その場合はオフラインで会って作業したり、オンラインでも画面共有してもらいつつ、サポートをしています。他にもチームで活用しているツール類は、たとえば読み上げソフトがちゃんと機能するかとか、ショートカットベースで操作できるかなども確認して検討するようになりました。
想像力と配慮ある情報伝達
Q.上村さんは、メンターとして、どのようなことを心がけていますか?
まずは当たり前ですが、想像して配慮することです。たとえば情報を伝えるとしても画像ではなくテキストで、テキストだとしても読み上げソフトが読み上げやすい形式で伝えるなど、こちらのちょっとした工夫でより良くすることができます。その上で想像や配慮も大事ですが、それではわからないことや勘違いも起こるので、気になることは尋ねるようにしています。
Q.簗島さんが感じる社内の雰囲気を教えていただけますか。
挑戦したいことがあれば積極的に応援してくれる職場だと思います。また、大きな会社なのでいろいろな人が働いていて、やりたいことを実現できるコネクションを作りやすい環境でもあると思います。
Q.簗島さんが、今後、チャレンジしたいことを教えていただけますか。
自分がこれまで専門にしてきた数学や、現在専門にしている機械学習の話題と、アクセシビリティや多様性推進の話題とを結び付けた仕事ができたら良いなと考えています。研究者としての専門性と当事者としての経験をかけ合わせて社会に貢献していきたいです。
新しく仲間になる人たちへのメッセージ
Q.新しく仲間になる人たちへのメッセージをお願いします。
(簗島さん)
私は、「イノベーションには多様な経験や視点をもった人たちがなるべく多くかかわることが重要である」と考えています。富士通ではたくさんの技術やサービスが日々生まれていますが、その過程において皆さんそれぞれのバックグラウンドがいろいろな形できっと活きてくるのではと想像します。皆さんにお会いできることを楽しみにしています。
(上村さん)
私は簗島さんと働くようになり、自分とは違うものの考え方、捉え方に日々良い刺激を受けています。昨今は仕事の多様化や技術の革新で様々な働き方ができるようになってきています。ぜひ新たな仲間として、今の会社にない考え方をどんどん導入していってください。
▼聴覚障がいのあるSE職の日常とキャリア
障がいへの理解と配慮のある社風
Q.谷畑さんの入社のきっかけを教えていただけますか?
就職活動においては、障がい者にとって働きやすい環境であるかを重視していました。私は不定期で通院があるため、会社を休んでしまう機会が人より多くなってしまいます。そのため、休みが取りやすい会社、フレックスタイム制度を取り入れている会社、勤務場所を選べる会社で働きたいという思いがありました。富士通や他の会社の説明会を受けて、同じような環境は他の会社でもありましたが、面接時に親身になって自分の話を聞いてくれたのが富士通でした。自分の持病、配慮して頂きたいことを詳細に聞いてくれた時に、富士通は一人ひとりに合わせた環境作りをしてくれると思い、入社を決めました。
成長を実感したアプリ開発への挑戦
Q.現在の仕事のやりがいは?
社内で使用しているサイトのアプリ化を行う開発に携わった際、テストが思い通りに行かず、焦りと不安を抱いた時期がありました。有識者への質問や、先輩方が過去に取り組んだプロジェクトの成果物を参考にして、テストが成功するまでひたすらコードを入力しました。先輩方のサポートもあり、無事に運用することができたときの達成感は忘れられません。上司、先輩方からいただいた「初めは失敗して当たり前、次に失敗をしないためにどう行動すべきかが大切」という言葉がとても印象的で、その時から業務への不安が減り、頑張ろうと前向きになりました。また、実際に社内の方に使用して頂く瞬間を見たときはとても嬉しく感じました。
健康を維持しながら生産性の向上を実現
Q.富士通では、最適な働き方を実現するため、働く場所・時間の自由化、テレワークの推進を行っています。谷畑さんの現在の働き方を教えていただけますか。
週5日のうち、4日はテレワーク、1日は出社しています。私の場合は、自分の裁量で働く場所を選べる環境です。出社時には、他の社員と予定を合わせる必要性はないため、業務調整のうえ、行きたい日や時間帯に出社しています。以前所属していたチームでは福岡を拠点としているメンバーと一緒にローコード開発を行っていました。チームによって雰囲気、業務内容が異なるため、常に勉強をしながら業務に取り組んでいます。
通院時はフレックス制度を利用しています。フレックスの場合、午後から出勤することも可能なため、ありがたい勤務環境だと感じています。また上司・チームメンバー・同期の方々も持病を理解してくれ、配慮してくださるため、入社後持病について困ったことや不安に感じたことはありません。実家(群馬県)の病院に通院することもあるのですが、その時は一定期間実家でテレワークをしています。
▼ある1日(オンライン)
8:45~ 9:00 出勤、メールチャット確認
9:00~ 9:15 オンライン朝会
9:15~12:00 タスク、開発作業、打合せなど
12:00~13:00 お昼休憩
13:00~17:30 タスク、開発作業、打合せなど
17:30 退勤
▼午前通院の日(オンライン)
13:00~13:15 出勤、メールチャット確認
13:15~17:30 タスク、開発作業
17:30 退勤
※通院で不足した就業時間分は別日で長めに働くように調整しています。
※プロジェクトによって、1日中複数の打合せがある日もあれば、全く打合せが無いこともあります。
快適な業務遂行のための環境整備と工夫
Q.テレワーク時と出社時の配慮や工夫していることを教えていただけますか。
テレワークのとき
普段補聴器を付けて生活していることから、長時間ヘッドホンを使用すると耳が痛くなるときがあります。そのため、テレワークの際は、周囲を気にせずスピーカーを利用して、仕事をしています。
出社するとき
周りの方もいるためヘッドホンを使用しています。耳の調子が悪いときは、社内システムからテレブースを予約し、テレブースでスピーカーを利用しています。
また、私の場合、インタラクティブな会議以外で開催時間が比較的長めの説明会を聞くときは、Teamsのライブ文字起こし機能とLivetalk(音声をテキスト化する社内ソフト)の両方を利用することがあります。どちらかの文字起こしに誤りがある場合、もう一方の文字情報を確認して、情報を補完しています。
支え合い、成長する環境
Q.小林さんが、普段、心がけていることやサポートされていることはありますか?
「左側から話しかけてくれた方が聞きやすい」と谷畑さんが伝えてくれたため、左側に立ったり、顔を向けて話すことを心掛けています。研修のときは一緒に勉強をしたり、昨年までは同じ部署でしたので、部署で共通の話やイベントなどの情報共有をしていました。今は異なる部署ですが、お互いに仕事の悩みの相談をしたりもしています。
ほかにも、一緒にランチに行ったり、旅行をしたり、プライベートな話もたくさんしています。お互いを理解し合える信頼関係があるからこそ、仕事にも良い影響を与え合えていると感じています。
Q.おすすめの福利厚生制度はありますか?
富士通には寮制度があります。一般的なワンルームの物件です。一般の賃貸物件を会社が借りており、入社時から3年程度は寮扱いの物件に住むことができます。
入社前の配属面談の際に、寮についてヒアリングいただきました。電車に乗る際、普段、違和感はないのですが、気圧の差が大きいと補聴器に圧がかかってしまい、負担があることを伝えたところ、寮の場所や通勤経路について配慮いただき、とても助かりました。
Q.社内の雰囲気を教えてください。
とてもアットホームな雰囲気です。テレワーク中心のため、顔を合わせる機会は少ないですが、定期的な懇親会、チームで出社日を合わせる等、交流する機会が設けられているため、和気あいあいとしたチームで仕事ができています。
また1on1という上司と1対1で定期的にお話する機会があるのですが、そこで自分のキャリアや悩み事など何でも話せる環境があるのも、とても魅力だと思います。
Q. 仕事のモチベーションを維持する秘訣を教えてください。
プライベートを充実することを大切にしています。テレワークの場合、家から出ないため、勤務終了後や、土日は可能な限り外出し、気持ちを切り替えるようにしています。また、同期と出社する日を合わせることが出来るため、同期と出社して、会話をしながら仕事に取り組む等、楽しみながら仕事ができるよう心掛けています。
新しく仲間になる人たちへのメッセージ
Q.新しく仲間になる人たちへのメッセージをお願いします。
(小林さん)
会社の規模が大きい分、たくさんの人や仕事との出会いがあり、自分に合う仕事や居場所が見つかります。ぜひ富士通に入って自分に合う環境で働いてみてください!
(谷畑さん)
入社前は不安な気持ちを抱える時期かと思います。私も入社まで不安と緊張でいっぱいでしたが、同期、先輩方のサポートのおかげでとても充実した社会人生活を送れています。ここ富士通は一人ひとりが輝ける場です。皆様と一緒に働けることを楽しみにしております。